最近注力しているゴムのMDシミュレーションについて、「マテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発と活用集」という本の一節(第5章 高分子・ゴム材料、 その他有機材料への取り組み事例の中の一節。)に書きました。
本のリンク
基本的には、タイトル通りにマテリアルズ・インフォマティクスという、ちょっと大上段に構えたコンセプトに関する本なので、あんまり関係ないんですが、まあ、それはそれで。
最近注力しているゴムのMDシミュレーションについて、「マテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発と活用集」という本の一節(第5章 高分子・ゴム材料、 その他有機材料への取り組み事例の中の一節。)に書きました。
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基本的には、タイトル通りにマテリアルズ・インフォマティクスという、ちょっと大上段に構えたコンセプトに関する本なので、あんまり関係ないんですが、まあ、それはそれで。
私は高分子材料を使った材料設計とかの研究開発にかかわっているつもりですので、少なくとも、その関連では、あまり機械学習とかは有効ではないのかもしれないと、比較的に否定的な見方をしております。
最近、以下の記事を見て、単純に否定していても意味がないかなあと、ちょっと思いました。
ディープラーニング関連の記事
つまり、私が否定的な雰囲気でしゃべっているときにでも、画像認識とか自動運転とかは割と近い未来に実用化されると認めてはいます。
そのうえで、高分子材料の材料設計とかはメゾスケールでの自由度があまりに高すぎるので、(引用元の文脈での)深い関数があまりに深すぎるのかなあと思っているのです。
実際、有機合成におけるレトロシンセシス(E.J.Corey 先生が提唱した最終生成物からのステップワイズな逆合成)のように、かなり限定的な応用においてもあまり成功しているとは思えない状況でした。
レトロシンセシスへの応用
私は、高分子材料の材料設計はレトロシンセシスよりもかなり深い事象だと思っています。
でも、「今月号の「化学」(そういう名前の雑誌)に “AlphaGo” の手法とかを転用する話が出ていて、その文脈で考えると、案外、人間の考えつくことぐらいを多少浅い有機合成の合成パス探索ぐらいには応用できるのかなあという気もしてきました。
で、材料設計に対しても、もしかすると、割と短い時間スケールで今は思いつきもしない「有効なアルゴリズム」が見いだされるのかもしれないなあと、ちょっとだけ思った次第です。
というか、教師データのほうを、例えば以下の記事のように上手に取り扱ってやるだけでも、ディープラーンできてしまうのかもしれないとも思ってしまう今日この頃なのです。
教師データの内容をうまく取り扱う方法の記事
最近、シミュレーションに注力しています。
その関係で、OCTA関連の本を出版される際に、一節分だけ検討結果を書きました。
Research Gate に原稿を上げておりますので、そのリンクをこちらにも示しておきます。
オリゴマーの偏析へのリンク
こちらは、まだ10回程度しか閲覧されていないようです。
東亞合成の研究報である TREND に書いた記事を「開発的な事項について」にまとめました。
その内容をこっちにも写しておきます。
1992年のR.P.I.への留学から始めた、四員環の環状エーテルであるオキセタン化合物の光カチオン重合に関する報告へのリンクです。
何だか、同じような話を何回も書いています。あまりよろしくないですね。反省します。
環状エーテルの塩基性等についてMO計算を行い、オキセタン以外の構造のポテンシャルを検討した。
環状エーテルの塩基性についての検討
工業的に広く検討されているオキセタンアルコール(OXA)の反応性について、まとめ直した結果を報告。
OXA/Epoxidesの報告
フェニルオキセタンとの比較で、シクロヘキシル基を有するオキセタンモノマーの特性を報告。β緩和が見られて興味深かったが、工業的にはあまり利用されていない。
他の人が書いたオキセタンモノマーの報告
オキセタンの光カチオン重合関連以外の事項については、以下にまとめました。
オキセタンアルコールを使って、有機・無機ハイブリッド材料の検討を行ったものです。
アルミ錯体との組み合わせでカチオン重合が開始できる系で、オニムム塩系の重合開始剤は使っていません。
結構透明性の高いものになるので面白かったのですが、材料としては使われなかったようです。
無機とのハイブリッド(2004年)
ホログラム記録材料関連の仕事に関わった際に、重合収縮と記録の品質との関連について、シミュレーションを簡単にやってみた結果です。
ホログラム記録材料(2008年)
OCTA関連の勉強を行っていく過程で、相分離についての知見が少したまってきたので、まとめてみました。
結構検索サイトの上位に出てきてしまうので、今となってはちょっと恥ずかしいのですが、一応、リンクを。
相分離の総説
これは、技術記事ではなく巻頭言ですが、まあ、一応リンクを。
巻頭言
レオロジー討論会や高分子討論会で発表しているネットワークポリマー関連のお話と、そのMD計算に用いている、Cognac入力用UDFの作成スクリプトをここに置きます。
とりあえず置いただけですので、時間ができたら書き換えます。
このスクリプトを現在見直していますが、いやー、かなり見にくいですね。
もうちょっと書き方を改善しなくては。
ちょっと、依頼原稿を書いているときに、ネットワーク構造のことについて考え直していました。
その部分だけを、いったんここに貼っておきます。
一般にプラスチックと呼ばれる材料は熱可塑性の高分子材料であり、室温よりはるかに高いガラス転移温度を有するため、室温近傍で固体のようなふるまいを持つ材料として使用することができる。
高分子材料は、そのガラス転移点以上の温度においては、一本一本の鎖がマクロブラウン運動を行うため、粘稠な液体として巨視的な流動が生じて流れてしまう。
これを粘弾性的に考えれば、ガラス転移温度以下であろうとも非常に長時間の観察を行うことで流れるような材料と考えるべきである。
高分子材料の力学特性を利用した材料設計を行う場合に、ネットワーク構造の導入は非常に有効な手段の一つである。
それぞれの高分子鎖が架橋点において連結することにより、ガラス転移点以上の高温においても、マクロブラウン運動が抑制され流れなくなる。
熱可塑性であるプラスチックとの対比から、ネットワークポリマーは熱硬化性樹脂として「硬い材料」と認識される場合も多い。
これは、最初に報告された熱硬化性樹脂がベークライトによる非常に硬い不溶不融な硬化物であったという歴史的背景によるものと考えられるが、ネットワークが常に固いものであるとは限らない。
その典型的な例として、柔らかさと強さを兼ね備えた旧知の材料であるゴムを挙げることができる。
さらに、室温からある程度の高温までの広い温度範囲において硬い材料として知られ、封止剤や接着剤に広く用いられているエポキシ樹脂のような材料であっても、ガラス転移温度以上ではゴム領域となりゴム弾性を示すのであるからその振る舞いを理解することは重要である。
粘弾性的な応答を想定すれば、室温程度のガラス状態での使用においても長時間使用でのクリープ的挙動を把握する必要性は高く、ゴム状態へのガラス転移による緩和に伴うエネルギー散逸も重要なファクターとなる。
以前に、瀬戸先生が京大に所属されていたころに書かれた文章でソフトマターの定義を書かれていたものがあり、現在の御所属のサイトに、そのイントロが再録されていました。
瀬戸先生は、ご自身の研究の流れに基づき、以下のように書かれています。
少々厄介なソフトマターの世界を物理学で理解しようとするならば、どのような道具立てが必要か。そのためのキーワードは「秩序変数」であり「相転移」であり「自己組織化」であろう。
引用:瀬戸先生のページ
ここに書かれているように、いろんなスケールの事象が非線形な応答を示すとってもややこしい物質なのですが、これを材料として使いこなしていきたいと思います。
当然、上記のような道具立ては必要なのですが、緩和現象を上手に取り扱うためには「散逸構造」というキーワードも大事にしていこうと考えています。
ずいぶん以前に相分離について、(他の先生の以前の報告を使って)簡単にまとめた記事が、検索の結構上位に出てきています。
何とか、これを上回れるようなクオリティーのものを、自分の力でもっとたくさん書きたいと思っております。