ネットワーク構造の重要性

ちょっと、依頼原稿を書いているときに、ネットワーク構造のことについて考え直していました。
その部分だけを、いったんここに貼っておきます。

高分子の流動

一般にプラスチックと呼ばれる材料は熱可塑性の高分子材料であり、室温よりはるかに高いガラス転移温度を有するため、室温近傍で固体のようなふるまいを持つ材料として使用することができる。

高分子材料は、そのガラス転移点以上の温度においては、一本一本の鎖がマクロブラウン運動を行うため、粘稠な液体として巨視的な流動が生じて流れてしまう。
これを粘弾性的に考えれば、ガラス転移温度以下であろうとも非常に長時間の観察を行うことで流れるような材料と考えるべきである。

ネットワーク構造による固定

高分子材料の力学特性を利用した材料設計を行う場合に、ネットワーク構造の導入は非常に有効な手段の一つである。
それぞれの高分子鎖が架橋点において連結することにより、ガラス転移点以上の高温においても、マクロブラウン運動が抑制され流れなくなる。

熱可塑性であるプラスチックとの対比から、ネットワークポリマーは熱硬化性樹脂として「硬い材料」と認識される場合も多い。
これは、最初に報告された熱硬化性樹脂がベークライトによる非常に硬い不溶不融な硬化物であったという歴史的背景によるものと考えられるが、ネットワークが常に固いものであるとは限らない。
その典型的な例として、柔らかさと強さを兼ね備えた旧知の材料であるゴムを挙げることができる。

ネットワーク構造の理解

さらに、室温からある程度の高温までの広い温度範囲において硬い材料として知られ、封止剤や接着剤に広く用いられているエポキシ樹脂のような材料であっても、ガラス転移温度以上ではゴム領域となりゴム弾性を示すのであるからその振る舞いを理解することは重要である。

粘弾性的な応答を想定すれば、室温程度のガラス状態での使用においても長時間使用でのクリープ的挙動を把握する必要性は高く、ゴム状態へのガラス転移による緩和に伴うエネルギー散逸も重要なファクターとなる。

「接着関連」にリンクを追加

「接着関連」の固定ページにリンクを追加しました。

Prof. Steven Abbottという方[note]たぶんイギリスの方[/note]のサイトを追加しました。

この方の自己紹介を見ると、私の最も尊敬する先生のお一人であるJ-M Lehn先生のところにいた後に、ICIに行かれた方のようです。
この方は、非常に広範な知識をお持ちなようで、工学的に重要な色んなジャンルのテキストを書いているよう(リンク)です。

接着関連のページに書かれている九つの絵で表した「接着メカニズム」の感覚が、接着力の由来の説明としてとっても妥当な気がします。
つまり、上述のような多数の機構が、一個一個の輪っかとして繋がっていて、それらによって形成された鎖が接着力を発現していると考えます。
その鎖の中の最も弱いところが切れる[note]”Weakest Link Model”として振る舞っている[/note]と考えれば、弱いところがやられるという感じがうまく表現できそうで、どれもが大事だということになります。
これらの感覚を、いずれ、日本語でまとめなおします。

なお、このページからのリンク少しわかりにくくて、タイトルの下の二行の下の段(”Basics”, “JKR”, “Beyond JKR”, “PSA”, “Testing”, “Other”, “The Book”)をクリックすれば飛んで行けます。

ソフトマターの話(瀬戸先生の表現)

以前に、瀬戸先生が京大に所属されていたころに書かれた文章でソフトマターの定義を書かれていたものがあり、現在の御所属のサイトに、そのイントロが再録されていました。
瀬戸先生は、ご自身の研究の流れに基づき、以下のように書かれています。

少々厄介なソフトマターの世界を物理学で理解しようとするならば、どのような道具立てが必要か。そのためのキーワードは「秩序変数」であり「相転移」であり「自己組織化」であろう。

引用:瀬戸先生のページ

ここに書かれているように、いろんなスケールの事象が非線形な応答を示すとってもややこしい物質なのですが、これを材料として使いこなしていきたいと思います。
当然、上記のような道具立ては必要なのですが、緩和現象を上手に取り扱うためには「散逸構造」というキーワードも大事にしていこうと考えています。

わかりやすく話す

わたしは、論理的に話そうとするとつい長くなってしまう時が多いようです。
つまり、三段論法どころではなく、五段、八段と、将棋や碁の高段者のような段数を重ねてしまう。

振り返ってみると、話している途中に「挿入句」どころではない「挿入節」を入れてしまって、新たな支流を作っているかも。
英語的には、”…, where something …”ってな感じで、something以降が長すぎる。

で、そっちの流れの分も落ちをつけようとするから、聞いている人には本筋が伝わらない。
書いているときには、書き直し(推敲)しているので、枝葉は分岐だとわかるように書けるんですが。
話しているとそうはいかない。

話すときにこそ、”K.I.S.S.”ですね。

反省。

「思考の整理学」

前の記事にも書いた、「思考の整理学」を、久しぶりに引っ張り出して眺めてみました。

約四十年前に書かれたエッセイなので、少なくとも私にとってはそんなに古臭く感じないはずなのですが、ちょっと文体が読みにくいですよね。
私は、この本は大好きですけど。

切り口とか内容は、すごくうなずける妥当なもので、結構目からうろこが落ちるような感じがするんですが、やっぱり若い人にはわかりにくいかもしれない。
この本を、以前に、会社に入社したての人たちに読ませて要約させる練習をしてみたことがありますが、なんだか文章にうまく入り込めない人が多かった記憶があります。
それと、漢文の題材を持ってくることにもついていけない人も少なからずいたような気もします。

適切な題材で、共感を呼びやすい、もう少し”up to date”なエッセイはないものかしら。

わからなかったら、三日考えてみよう

何だかよくわからないときがあるだろう。
色んなタイプのわからなさが起きるときがあるだろう。

何処からとりついていいかも、理解できないときもある。
また、最初の切り口だけは判るときもある。

そんなときは、とりあえず、三日間だけ考えてみよう。
当然、呆然と考えるのではなく、かといって、真剣に考え込んでいては疲れ果ててしまうので、いつも頭の周りを紐をつけて飛ばしているような感じで。

決して、この時点であわてる必要はない

そうやって、自分の周りを飛ばしていると、ある日突然、わかってくるかもしれない。
その状態は、いろんな表れ方をするだろう。

「分かる」というような感じで混沌の中から分別できてくるのかもしれないし、「判る」というように判明して明らかになるのかもしれないし、理(ことわり)が「解って」理解できるかもしれない。

そんなふうに時間を使って見て、考えることに飽きて興味がなくなるのなら、わかる必要もないことかもしれない。
何だか、もやもやと心に残ることならば、いずれまた、心の表層部に疑問として浮かび上がってくるだろう。

そのあたりの見極めのために、三日間ぐらいは頭の周りを飛ばしてみることをおすすめします。

で、浮かび上がってくるようなことが多い人には、例えば、外山滋比古先生の書いた「思考の整理学」の中の、「発酵」とか「寝かせる」とかを読んでみて、それをどう仕立てあげるかを考えてみることも役に立つかもしれません。

「考えをまとめて、人に伝える」

表題に示した文章を、上記メニューの「色々な考え方」の下に、追加しました。

これは、以前に、会社の若い人たちへの教育用に作ったものを、彼らの意見も取り入れながら何度も書き直したものです。

結構同じようなことを繰り返したちょっと長めの文章になっていますが、ご自身のことを振り返りながらゆっくり読んでいただければ、いいかなと思います。

研究・開発でやりたいこと

ちょっと思いついた言葉遊びをメモしておきます。

基本姿勢

やっぱり、「物事の首根っこを摑まえる」ということが何をやるにも大事だと思います。

研究と開発

ただ、その首根っこなるものが、研究と開発では異なっているのかなあと感じています。

  • 研究においては、「なぜそうなるのか?」
  • 開発では、「何をコントロールすればよいのか?」

見える化

そのとき、ついでに「見える化」することに気を付けると、人に伝えやすくなるかもしれません。