ちょっと、依頼原稿を書いているときに、ネットワーク構造のことについて考え直していました。
その部分だけを、いったんここに貼っておきます。
高分子の流動
一般にプラスチックと呼ばれる材料は熱可塑性の高分子材料であり、室温よりはるかに高いガラス転移温度を有するため、室温近傍で固体のようなふるまいを持つ材料として使用することができる。
高分子材料は、そのガラス転移点以上の温度においては、一本一本の鎖がマクロブラウン運動を行うため、粘稠な液体として巨視的な流動が生じて流れてしまう。
これを粘弾性的に考えれば、ガラス転移温度以下であろうとも非常に長時間の観察を行うことで流れるような材料と考えるべきである。
ネットワーク構造による固定
高分子材料の力学特性を利用した材料設計を行う場合に、ネットワーク構造の導入は非常に有効な手段の一つである。
それぞれの高分子鎖が架橋点において連結することにより、ガラス転移点以上の高温においても、マクロブラウン運動が抑制され流れなくなる。
熱可塑性であるプラスチックとの対比から、ネットワークポリマーは熱硬化性樹脂として「硬い材料」と認識される場合も多い。
これは、最初に報告された熱硬化性樹脂がベークライトによる非常に硬い不溶不融な硬化物であったという歴史的背景によるものと考えられるが、ネットワークが常に固いものであるとは限らない。
その典型的な例として、柔らかさと強さを兼ね備えた旧知の材料であるゴムを挙げることができる。
ネットワーク構造の理解
さらに、室温からある程度の高温までの広い温度範囲において硬い材料として知られ、封止剤や接着剤に広く用いられているエポキシ樹脂のような材料であっても、ガラス転移温度以上ではゴム領域となりゴム弾性を示すのであるからその振る舞いを理解することは重要である。
粘弾性的な応答を想定すれば、室温程度のガラス状態での使用においても長時間使用でのクリープ的挙動を把握する必要性は高く、ゴム状態へのガラス転移による緩和に伴うエネルギー散逸も重要なファクターとなる。